建築マップキーフフゥク集合住宅 3601

どこまでも水平に続く、帯状に長い短冊型の農地とそれらを取り巻く無数の水路。オランダの印象的国土景観である。
その水路に沿った街路沿いにぎっしりつまって、妻面を通りに面して、屋根より高い曲線や階段状の破風のケーブル住宅を配し、それらに取り囲まれたところをオフイェと呼ばれる中庭で構成するのがオランダでよく見かける都市住宅のかたちである。

　　
パラペットまで伸びる2階窓　　三角公園のある辺り

キーフフゥク集合住宅地はロッテルダム中心市街地の南を流れる新マース川の川向こう、マース港に近い、運河の流れる街路沿いを従前の市民都市住宅で囲まれた内側にある。のこぎり歯のような切妻屋根の並ぶ煉瓦造りの街並みの間に、この住宅地への７つのアプローチがある。その一つ、Ｊ.Ｊ.Ｐアウトの特徴ある二つのコーナー部のある方から入るとそこは坂道で、川は無いのに橋があり、周りの街路沿い住宅より大分下がったところ。ここは以前は沼地だったのかもしれない。

周りを取り囲むのこぎり歯の屋根と対照的な水平な屋根、周りを取り囲むレンガ色と対照的な白い壁と黄色のサッシュ枠、玄関ドアの赤、コーナー部の緑色の壁があきらかな差異でそこに広がっている。
計画地面積はおよそ４.５ｈa、３００の住居ユニット、湯沸施設、コーナー部の２つのショップと２つの児童公園と１つの垂直線といくつかの水平線で構成された教会がある。各住戸は幅４.１ｍ、奥行７.１ｍのメゾネットで画地を取り囲むように配され、その内側に専用庭を持つ。
住棟はメゾネットの住戸単位を超え、建物全体に渡る連続性を横連窓で表現し、予算の関係でバルコニーが取れなかったらしく、２階サッシをパラペットすれすれまで上げているので、メゾネットであることを見逃してしまうほどの水平連続の強調された外観になっている。
アウトは表と裏の平等化を表現として意図したらしいが住棟の切れ目から中庭部分を覗いたところ、中庭のコモン化はどうやら私的専用に阻まれているようであった。

２つの曲面コーナー部のある通り　　団地内道路十字交差部辺り

オランダでは集合住宅の再生が行われているらしく、ここでも現在の居住水準に合わせて二住戸を１住戸にリストラクチュアリングしていた。従来の延べ床面積は６１.５でいわゆるで大家族向けの３LKで収納空間は殆ど無く、建設当時としても狭小ではあっただろうが、この住宅の建てられた時代背景の中でアウトのような真っ当な設計行為は時代を経ても、再生の可能性を含み、再生されることによって居住環境としても魅力的なものになるものなのだという想いを強くした。
後で知ったことだが、この団地は基礎杭の不同沈下により全部壊して建て直ししたということであるが、（ということはレプリカ？）それを知った今でも信じがたいほどに、キーフフゥク集合住宅地には１９２５年以来の時間が在った。反対意見もあったというが、一般の市民の住む住宅とその景観を大事にするオランダの人達の住まうことに対する社会的共有のあたたかいまなざしも感ずる。
それにしても地震や台風が無い変わりに、不同沈下の問題。オール好条件なんてどこにもないのかも。


ARCHTECTURAL MAP
Woningbouw/Housing Kiefhoek 　キーフフゥク集合住宅