鎌倉から東に行った海岸沿いに、その名が将軍が恩賞を披露した事に由来するといわれる披露山があり、その中腹に、ロケやコマーシャルなどでもよく使われている地元ではＴＢＳと呼んでいる住宅地がある。
1980年代には、､日本版ビバリーヒルズと宣伝される高額な住宅地が東京の周辺にいくつか開発された。ゴルフ場つづきというところもあったように思う。
塀が無く、広い庭が芝生で斜面続きになっているという住宅地というのは、日本人の住まいのあこがれの一つに数えられるものではあるが、その価格に比べ、個人的自由さと共同性の折り合いをつけられる例えば住居間距離が殆ど無い敷地形状や区画割、住宅のかたちなど、日本の戸建て住宅地の現状に対する不満足度がかくされているとみることも出来る。
｢ここは日本？｣と同行者が発したこの披露山住宅地はそれより以前の1965年に開発され出した所なので、バブル期のものとは一線を画すものではあるのだろうし、特殊例でもあるだろうが、憧れとしてではなく、このような住宅地を望む需要層が居たこと、それが実現され、継続していることを確実に示してもいる。
アプローチは、住宅地専用のゲートからで、住民達が設立した管理組合法人の管理事務所がある。住宅地内道路はおそらく私有地で、先ほど上ってきた道路より広くて整備が行き届いている。

鎌倉や葉山など湘南と呼ばれるこの辺りでは、海がみえること・富士山が見えること・江ノ島がみえることという３条件が住宅地の理想条件としてあげられるそうだが、その３条件をもつだけでなく、まさにそれを独り占めしたようなうらやましい限りの見事で美しい眺望が得られる場所であった。住宅地のすぐ上にある夕方の披露山からの景色は、左に海とその遠くに江ノ島が、その少し右に富士山が、青から桃色染まっていくちょうどその時で、明治時代に出来た写真か手描なのか解らない色つけ絵葉書(人着写真)のようで、まさに絶景。
こんな景色をみながら生活している人もいるのだなーと今更ながら感心してしまった。